6年前に買ったデジカメ(コンパクトデジタルカメラ)が壊れたので、先日、買い替えに量販店に行ったところ、以前のような種々様々なコンデジの売り場はなく、自分が求める製品は既にどのメーカーからも販売されていなかった。25年間ほど( すなわち四半世紀だ!)お世話になった「 コンパクトデジタルカメラ」だが、自分ももう買わない可能性が高くなっており、それについて書くブログ記事も自分の人生でこれが最後かもしれない。いわば本記事シリーズは「デジタルカメラ」に対する鎮魂歌(レクイエム)と言える内容だ。
1■6年ぶりの買い替えでコンデジ売り場は衰亡
6年前に買った
NikonデジカメCOOLPIX A900
が故障した。修理を検討したが、すでにメーカーの修理対応年月を過ぎており、メーカー対応の修理は出来なかった。そのため、買い替えを念頭に秋葉原のヨドバシカメラのカメラコーナーを久しぶりに眺めてみた。
秋葉原のヨドバシカメラ(所謂ヨドバシAkiba)はしばしば行くので、デジタルカメラのコーナーの前も時々通り過ぎる。しかし買い替えでもない限り、じっくり見ることなど無い。よってこの6年間に起こった売り場の変化に自分は気が付かなかった。
昔から秋葉原のヨドバシカメラのカメラコーナーは通路が4~5列あって、両脇の店にカメラが並んでいる。列は概ねメーカーごとに分かれている。その全体的な雰囲気は今回も変わってはいなかった。だが並んでいる製品群が違っていた。
「デジタルカメラ」。すなわち「デジタル」な「カメラ」。この言葉通り受取り、種類を分けるとすると以下のようになると思われる。
- コンパクトデジタルカメラ(コンデジ、レンズ固定式カメラ)
- レンズ交換式デジタルカメラ(一眼レフ、ミラーレスなど)
- スマートフォン(タブレット)のカメラ
本記事で述べるカメラは1番のコンパクトデジタルカメラ、略称コンデジだ。年齢が20代以上の人で、このデジカメを一度も触ったことがないという人は少ないのではなかろうか。世間でもそうだと思うのだが、自分の感覚では「つい最近まで」カメラと言えばこの「デジカメ」、コンデジであった。
一方で2番の「一眼レフ」「ミラーレス」などと呼ばれるレンズ交換式のデジカメは、それ以前のレンズ交換式銀塩カメラ(フィルム式カメラ)に取って代わってから、カメラ上級者の間で使われている。
2024年夏現在の秋葉原のヨドバシカメラのカメラーコーナーでずらりと並んでいたのは「レンズ交換式カメラ」とそのレンズ製品であった。コンパクトデジタルカメラではなかったのだ。
「レンズ交換式カメラ」は「普通の」ユーザは使うものではない。従来のコンパクトデジカメは値段は数万円から高くてもせいぜい10万円くらい。それに対してレンズ交換式カメラは5万円くらいから、10万円台も珍しくもなく、それこそ100万円に行こうかという品もある。そして交換レンズも同じくらい?値段がする。カメラマンという職業プロ、上級者、マニア、カメラ小僧(年齢問わず )が買っていると思われる。カメラが趣味の人は昔からソコソコ多いように思われ、周りの人にその手の人がいればレンズ交換式カメラも超絶珍しいというものではないが、自分(もしくは行動を共にするような家族)がその趣味でない限り、身近なものではないだろう。
2024年現在のヨドバシカメラのカメラコーナーでは、レンズ交換式カメラが大部分の中で、コンパクトデジカメは最端1~2列に、申し訳程度に陳列してあった。6年前にメーカー各社からそれぞれ複数のコンデジ製品が出ていた頃を考えると極めて衰亡、個人的にはほとんど消滅と言っても良い。
コンパクトデジタルカメラ所謂コンデジがここまで衰亡してしまったその理由は、言うまでもない、上の「デジタルなカメラ」の3番目、「デジタルカメラ」の機能を備えた「スマートフォン」の著しい普及である。コンパクトデジタルカメラの機能はスマートフォンで代用が効くと認識され、需要が著しく激減したのである。
考えてみると、昔から秋葉原のヨドバシカメラには今の「レンズ交換式カメラ」のコーナーと「コンパクトデジカメ」のコーナーがあったような気もする。自分は「レンズ交換式カメラ」は興味がなかったので、ほとんど意識したこと無かったが、おそらくある時期(少なくとも2019年以降)に「コンパクトデジタルカメラ」の大きなコーナーは消滅し、「レンズ交換式カメラ」のコーナーだけが残ったのだろう。自分はそれを「コーナーの場所が少し移ったのかな」程度にしか思わなかったのだ。
「レンズ交換式カメラ」は上級者、プロ向けの製品で、一般的とは言い難い。それこそ家電製品では日本で一番の秋葉原、その中のラインナップ豊富で有名なヨドバシカメラだから置いているのであって、一般的な、郊外型の家電量販店で「レンズ交換式カメラ」がわんさか売れるはずはなく、ネットで調べると、そういう多くの街中の、ちんまりした家電量販店ではデジカメコーナー自体が消滅したという報告が散見される。
2■データから見るコンデジの衰亡
ではインターネット場の統計データからデジタルカメラの売上の変遷を調べてみよう。
・デジカメの市場推移 2021年版 一眼レフ、ミラーレス、コンパクト/monoxデジカメ比較レビュー
http://www.monox.jp/digitalcamera-news-camera-sales-2021.html
上記記事より
このグラフの「レンズ一体式」がコンパクトデジタルカメラだと思われるが、これを見ると分かるように「コンデジ」の出荷額は最盛期2008年に比べ2020年には20~30分の1になってしまったようだ。
その一方で「レンズ交換式デジタルカメラ」すなわち一眼レフなどのカメラはコンパクトデジカメのような明らかな衰亡まではいかず、それどころかコンデジの衰亡が始まった2009年以降も出荷金額を増やし、2018年まで衰える様子を見せない。ただしマニア向け?プロ向け?なため、市場規模としてはコンデジ最盛期の1/3の程度のようだが、それでも立派なものだ。
2018年以降はレンズ交換式デジタルカメラの出荷金額も減少しているように見えるが上の記事によれば「レンズ交換式デジタルカメラ」の中でも「一眼レフ」から「ミラーレス」への移行が進んでいるらしい。当記事はコンパクトデジカメを扱った記事なので、レンズ交換式カメラについては詳説しないが、上の記事には両者の違いを示す興味深いグラフもある。
上記の記事より
すなわちデジカメ、一眼レフ、ミラーレスの出荷台数と単価の違いの2012-2020年のグラフだが、これを見ると前のデータで出荷額はそこそこ維持しているレンズ交換式カメラも、一眼レフおよび一眼レフとミラーレスの合計としてはかなり減っていっていることが分かる。
その結果、減少割合としては圧倒的に大きいでコンデジも、2020年の時点では未だに一眼レフ、ミラーレスのそれぞれの売上台数を上回っていたことが分かる。(前述のように2020年には2008年に比べてコンデジは1/20以下になっているにもかかわらず。)
また、上のグラフから2012年と2020年の状況をまとめ直してみると以下のような変化となっている。
2012年 | 2020年 | |
コンデジ | 1万円くらい | 2万円くらい |
一眼レフ | 4万円くらい | 4万円くらいで変わらず |
ミラーレス | 3万円くらい | 8万円以上! |
すなわちデータとして最初に上げた、レンズ交換式カメラの出荷額の維持は、ミラーレスカメラの維持と、その高価格化によって支えられており、レンズ交換式カメラの需要自体が継続しているのではないことが窺える。それを示すように、上の記事ではレンズ交換式デジタルカメラのレンズの単価推移というのもあり、レンズ台数は減っているにもかかわらず、単価は上がっていっている。
これで言えることは明らかに
「デジタルカメラはコンパクトデジタルカメラ(レンズ固定式)が完全に衰亡、レンズ交換式デジタルカメラはミラーレスを中心に存続しているものの、全体台数としての需要は減少、カメラ本体もレンズも高価格化し、すなわちマニアやプロのための製品に特化しつつある。」
ということなのだろう。
ではそのコンデジの衰亡の原因は、前述したようにスマートフォンの普及なのは明らかだ。
カメラとスマートフォンの販売台数の推移 – デジカメinfo
https://digicame-info.com/2019/11/post-1295.html
上記記事より
そのため、デジタルカメラという製品は多くの人にとって縁遠いものとなったが「デジタルなカメラ」自体が縁遠くなったのではない。むしろ、多くの人にとって必須になったスマートフォンに十分な性能の「デジタルなカメラ」が搭載されたことで、多くの人にとっては形を変えて「デジタルなカメラ」は一層身近なものになったのだ。
3■コンパクトデジカメの使用状況は風前の灯火か
デジカメの普及率に関する比較的新しい以下として以下のような記事があった。
・デジタルカメラの普及率の長期推移をさぐる(2023年公開版)(不破雷蔵) – エキスパート – Yahoo!ニュース
だが、私はこの記事でのデータの扱い方は非常に疑わしく、この記事の内容も薄っぺらいように感じる。2人世帯以上の家庭でデジカメ(スマホは含まれない)の普及率が2013年頃の77%から2023年には50%まで低下、平均保有台数は1.34台とのこと。しかしこれは「所有している」というだけで、もうほとんど使われておらず、デジカメとの使用状況実態とは乖離しているのではなかろうか。そしてこの記事は
携帯電話、特にスマートフォンの普及が進むに連れ、一般的な家庭におけるデジタルカメラ機能の需要は、スマートフォンなどにシフトしつつあるようだ。さすがにゼロ%となることはないだろうが、今後もデジタルカメラの普及率は減少していくことだろう。
と締めくくられているが、私としてはコンデジは限りなく0%になってもおかしくない、デジカメとしては0%にならないのはレンズ付きカメラが残るからの可能性があるからだと思う。
それを窺わせるような記事が2022年のもので以下のようなものがあった。
・【2409人調査】カメラを持っている人は少数派。しかもカメラを持ってるのに、一年に一度も使わない人が多い!? | 株式会社アクロスソリューションズのプレスリリース
これによればデジカメを持っているのは42%、しかしその中でもこの1年間使っていない人は58%だという。以前に買っていた経緯でデジカメを持っていたとしても、スマホでそれなりに綺麗な写真が撮れるし、もうそちらで撮影することが専らとなり、デジカメをほとんど取り出すことが無くなった。そういう人が6割になる、という状況なのだろう。
以前は当たり前のように、家庭にあり、使われていたコンパクトデジタルカメラ。しかし多くの家庭ではスマートフォンでその機能(カメラすなわち写真撮影)を済ませるようになり、デジタルカメラは急速に使われなくなりつつある。言ってみれば、デジタルカメラは多くの家庭の部屋の片隅でひっそりと死を待っていると言える状況と言えよう。遠からず、多くの人にとってはデジカメは「過去のもの」になると思われ、スマホが子供の時からあった若い世代は「(スマホではない)カメラなんて触ったことがない」という人々が増えてくることになるだろう。
上の記事やアンケートの報告の内容からすれば、デジカメ(コンデジ)はまさしく今現在、衰亡への道を進みつつある状況という強調はないように思われるが、実態はそういうことなのだと思う。
4■次の記事、自分のコンデジ使用歴を振り返る
以上、自分が量販店売り場で感じたコンパクトデジカメの衰亡を出発点に、デジカメの衰亡をいくつかの記事データから確認したが、続く記事では私自身の「(コンパクト)デジタルカメラ」の過去と現在(そして未来はないのだろう)を振り返ってみたい。
(続く)