5月に書いた記事(「2025年版 中華タフネススマホ高性能を探す」)で、自分が購入を検討するために興味ある「中華タフネススマホ」をリストアップして紹介した。しかしそもそも「中華タフネススマホ」とは一体どういう商品なのであろうか?
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■「中華タフネススマホ」とは?
タイトルに挙げた「中華タフネススマホ」。
この言葉は固有名詞とは言い難いので明確な定義はないが、私の捉えるところでは
メジャーなメーカーとは別に、低価格、タフネス、大容量バッテリー等を売りにしてニッチな市場で一定の売上を確保するようになった、中国中小メーカー群の製品、特に特に中国・深圳を拠点としているメーカー群(Oukitel、Cubot、DOOGEE、など)の製品
を指すのが妥当だと考えている。
中国のメーカーには中小とは言えない、メジャーになった企業(Huaweiなど)もあることから、上記定義を明確にするために
- 格安タフネススマホ
- 格安系中華スマホ
- 深圳系列中華タフネススマホ
など、もう少し対象を明確にする言葉にしたほうが良いかもしれない。自分自身、まだ言葉の使い方に迷いが有る。(後述「呼称は確定していない」)
■中華タフネススマホのメーカー一覧
具体的に「中華タフネススマホ」のメーカー達を挙げてみる。
会社名(もしくはブランド名) | 日本語読み | 創立年 | 本社(全て中国) | 備考 |
OUKITEL | オウキテル、オキテル | 2007年設立(2013?) | 広東省深圳市 | |
Ulefone | ユーフォン、ウレフォン | 2014年 | 広東省深圳市 | |
DOOGEE | ドゥージー | 2013年 | 広東省深圳市 | |
Blackview | ブラックビュー | 2013年 | 中国・香港市 | 深圳は製造拠点。 |
CUBOT | キューボット | 2004年設立(2013?) | 広東省深圳市 | |
Umidigi | ウミディジ | 2012年 | 広東省深圳市 | |
Fossibot | フォッシボット | 2022年 | 広東省深圳市 |
【以下参考:メジャーになった中国の企業たち】
以下は世界的な企業になったことで「ニッチな市場で一定の売上を確保するようになった、中国中小メーカー」とは一線を画するメーカ達であるが、これらも深圳とは浅からぬ縁ががあることが分かる。
- HUAWEI (ヒューウェイ) 1987年 本社:中国・広東省深圳市
- Xiaomi (シャオミー) 1980年 本社:中国・北京市
深圳に研究センターや製造拠点を置いている。 - Realme (リアルミー) 2018年 本社:中国・広東省深圳市
- ZTE (ゼットティーイー) 1985年 本社:中国・広東省深圳市
- OPPO (オッポ) 2004年 中国・広東省東莞市(深圳より50km)
研究センター、関連企業を深圳市を抱えている。 - VIVO (ビボ) 2009年 中国・広東省東莞市(深圳より50km)
研究センター、関連企業を深圳市を抱えている。
■なぜ中国・深圳なのか
上に挙げた企業は。メジャーになった企業を含めて深圳ばかりである。深圳に集まっている理由は以下のようなものらしい。
- 広東省一帯に電子部品、製造サプライチェーンが集約。
- 鴻海(フォックスコン)などの大規模スマホ組立工場が広東一帯にあり、OEMの拠点になっていて、中小メーカーでもこれらのOEMに委託し、短期で製品化。
- それらによって高度な製造技術と熟練労働者が集まっている。
- 深圳は中国初の経済特区(1980年設立)で創業支援や税制優遇が手厚い。
歴史的な経緯を記すと、1978年改革開放政策の後、深圳は香港に隣接する地理的利点から、1980年に経済特区に指定され、外資誘致と市場経済の試験場となる。その後、電子産業の発展とともに深圳は成長を続け、2010年代には研究開発の投資も行われ、深圳は「中国のシリコンバレー」とも呼ばれるようにまでなった。現在ではスマホや先端技術の開発・生産拠点として地位を確立しているということのようだ。
■格安中華タフネススマホ登場の経緯
●スマホメーカーの変遷
以下、スマホメーカーの変遷から述べる。
本体・OS一体のApple製品(iPhone)を除き、他のスマートフォンメーカーはかなりの変遷を経てきた。スマートフォンが「本格的に」広まり始めたのはiPhoneの登場(2007年)とそれに続くAndroidの登場だが、2008年に登場した最初のAndroid機はHTC(台湾)製だった。その後、メーカーとしてHTCの他、モトローラ(アメリカ)、ソニー・エリクソン(日本、スウェーデン)、サムスン(韓国)、LG(韓国)、Nokia(フィンランド)、その他日本(シャープ、NEC、富士通、京セラ、パナソニック、日立、等々)などが参入した。(なお、Android以前はブラックベリー(カナダ)、Palm(アメリカ)などがあった。)
しかしやがて淘汰されるとともに、HUAWEI、Xiaomi、ZTE、Oppo、Vivoなどの中国メーカーが中国を中心にシェアを拡大、やがて世界で売られるようになる。
ネット上のサイトを見ていると、「中華スマホ」と言った場合にはこれらのメジャーな中国メーカー製品を指す場合もある。そして「中華タフネススマホ」と言うと、それらのメジャーな「中国メーカー」の作るタフネススマホを指してしまう可能性もある。たがここで述べる「中華タフネススマホ」はそれを指したいのではない。
●深圳発中華タフネススマホメーカー登場
2010年後半から、メジャーとは言い難い中小の中国メーカーが登場し、ニッチな市場を開拓し始めたが、これらのメーカーはほとんどが中国・深圳に置いている。そしてこれらのメーカーがウリにしたのが「低価格」「大容量バッテリーを搭載したタフネス」だった(後者に関してそうでない製品も多く出している。)
●深圳の中小スマホメーカーが狙った市場
このようなメーカーが登場した経緯は何か?
(1)低価格狙い
スマートフォンは世界中の人々が使うようになり、2025年最新のデータでは世界の人口80億人のうち半数近くが使用しているという。世界の人口のうち先進国は15%にしか過ぎず、85%は発展途上国であることを考えると、実に信じがたい数字だ。
先進国でメジャーなスマートフォン製品は多くが高機能・高性能化し、その結果、主要なメーカー製品の価格帯もかなり上昇した。当初は携帯電話、スマートフォンが10万円を超えることなどは考えられなかったのが、2018年頃からは最新・ハイエンド機種は15万円、20万円のものも珍しくなくなった。メジャーなスマホメーカーも低価格帯製品を出すのだが、それでも高い感がある。
そんな製品を発展途上国を含め、裕福でない人々が買えるわけもなく、安くなくては買えない、もしくは安いことを希望する人々向けに多くのメーカーが参入するようになった。
(2)バッテリー容量の大きいタフネススマホ狙い
スマートフォンがこれだけ多くの人の必需品になったにもかかわらず、バッテリーの貧弱さは初期の頃からほとんど解消されていない。それどころか、フューチャーフォン(ガラケー)の頃よりも明らかにバッテリーの保ちが悪くなり、しかもユーザーによるバッテリー交換が2010年台半ばにからほとんど出来ない仕様になった。すなわち「バッテリーが尽きたらそれを交換する」ということも出来なくなり、バッテリー環境は著しい悪化を辿っている。
応急処置としてモバイルバッテリーが広がったが、快適な使い勝手とは言えない。
以上のようなユーザの潜在的な不満から、値段が安いスマホ、またとりあえず「重くなってでも」大きいバッテリーを搭載したスマホ、というのが一定の需要があったと思われる。
そして、大きく、重たくなると、落とした時の破損の確率は格段に高くなる。これを補うにはゴツくなってでも頑丈、すなわちタフネスにすることだったと思われる。
(3)安かろう悪かろう?低かろう?
スマホが登場して15年余り、スマホ登場当初は最新機種でもスペックのあちこち(通信速度、カメラ、記憶容量、などなど)が物足りず、新しい製品を心待ちにするところがあったが、全体的に性能が上がり、必ずしも最新機種、最高スペックが必要なくなっていることを多くの人が感じるようになった。その結果、最高性能のハードウェアでなくとも、そこそこ使えてしまう、安い製品が作れてしまえる現実がある。
Oukitel、DOOGEEなどの製品を調べると、SoC(CPU)のベンチマークスコアは今の一般メーカーの最新機種に比べて遥かに劣っており、またメインメモリや記憶容量もあまり大きくないものが多い。
そういう点では「安かろう(性能が)低かろう」という部分はある。だが「悪い」かどうかはユーザーの求めるものによるだろう。
自分の体験を言えば、、、、自分はAntutuスコアが60万のGalaxy製品から40万弱のOukitel WP21に乗り換えたが、確かに処理性能は劣るのを感じたが、そのバッテリー容量(9800mAh)と充電速度(60W)は大変快適で、2年4ヶ月、満足に使うことが出来た。カメラ性能としてGalaxyで気に入っていた広角カメラはOukitel WP21では全然駄目だったが、それ以外のカメラ性能は特に不満を感じたことはない(年間8000枚以上撮影した)。
そんなこんなで、たとえ購入金額が同額だったとしても私の評価はWP21の方が高かったと思うのだが、実際にはGalaxyは中古で9万円弱、Oukitel WP21はAmazonの公式ストアで5万円弱だった。
スマートフォンは2009年以来、19機種を使ってきたが、結局のところ自分にとってOukitel WP21は十分に満足感の高い製品で、その中華タフネススマホは十分に良い製品であったのだ。
■日本での扱い
●販売に関すること
この記事で取り上げたメーカーたち、すなわちOukitel、uleFone、DOOGEEなどは基本的に2025年現在、実店舗での取り扱いはほとんどない。
その一方で、中華タフネススマホはAmazon日本や楽天市場、Yahooショッピングなど、日本のネット通販メーカーでも取り扱われる事例が増えている。たとえばOukitelがAmazon日本で公式ストアで販売していたり、DOOGEE直営店が楽天市場に進出したりしている。
それらの場合、在庫を日本に持っている場合もあるようだが、一方で個別のストアの中には中国に在庫があり、注文を受けてから中国から配送する場合も多い。発送予定日や配達日数を確認したほうが良い。
また、一般論としてmicroSDカードなどではAmazon日本の店も詐欺商品だらけであるが、この手のスマートフォンも一部には詐欺商品が混じっている可能性がある。中国の大手通販サイトAliexpress(アリババ系列)では多くの中華タフネススマホが扱われているが、明らかに詐欺商品と思われる中華スマホが多数ある。日本のサイトでは中華タフネススマホについてそこまで詐欺商品が蔓延している感じではないが、消費者としても慎重な対応が求められるだろう。
●仕様に関すること
スマートフォンは電話の機能があることも特徴だが、電波は各国、各キャリアで仕様が異なる。よって日本で使うのに電波の仕様が最適化しているとは限らない。特に日本で快適に使うにはプラチナバントと言われる周波数が使えることが望ましいが、中華タフネススマホの各商品でそうなっているとは限らず、情報の収集をお勧めする。
また、日本では電波に絡む商品を販売するのに「技適」すなわち「技術基準適合証明」または「技術基準適合認定」の取得が必要とされる。この取得がされていない商品を日本で使うことは電波法違反になり、すなわち違法行為となる。
昨今、中華タフネススマホメーカーは日本で販売するにあたり、技適認証を受けているものも多くなっているが、全てのメーカー、全ての商品が技適認証を受けているとは言えないため、購入時には注意が必要である。日本の実店舗で販売されているスマートフォンで技適認証がない商品はまず考えられないが、日本語のインターネット販売サイトでは多くの技適未認証商品が販売されている。
技適のないスマホを利用したことによる電波法違反で個人が逮捕された事例は2025年現在ないとされるが、違法は違法である。
■購入の際の注意点
- マイナーなメーカー、商品なので日本語および大手サイトの情報が限られる。
- その結果、仕様等に関して誤った情報が流布することがある(たとえばmicroSD搭載有無に関することなど)
- 商品として「高性能」などが謳われることが多いが、使われているSoC(CPU)を調べると全く高性能とは言い難いことが多い。
- 日本では店舗で発売していないため、不具合時のサポートなどが十分期待できない。
- 大手メーカー製品に比べると信頼性が落ち、製品も当たり外れがある可能性がある。
- 通販でしか買えないということになると、格安商品に惹かれる人々を狙い、詐欺商品が横行している。「格安中華スマホ」だと思ったら詐欺商品という可能性が少なくない。
そんな状況なので、購入の際にはせめて「公式サイトストア」で買うのが望ましい。
■呼称は確定していない
「中国スマホメーカー」の中に入れるにはあまりにマイナー、ニッチなこれらの企業、製品を指す言葉は確定しているとは言い難く、とりあえず自分は「中華タフネススマホ」と呼んでいるが、実際にはタフネスでないスマホも多く作っている。私自身はこれらの製品を「安いから」買っているわけではないのだが、価格帯的に「相当安い製品」なのも確かだ。
- 中華格安スマホ、中国格安スマホ
- 深圳スマホ
- 中華タフネススマホ、中国タフネススマホ
- 深圳格安スマホ
- 深圳タフネススマホ
- 中華ラギッドフォン
- 中華ラギッドアウトドアフォン(rugged/outdoor phone)
■中華タフネススマホは危険か?セキュリティに問題か?
近年、中国の製品はその安全性、セキュリティに関して不安な声が出るようになった。これは有名ブランドも含めてでHuaweiなどが真っ先にやり玉となり、2019年にはGoogleと取引できなくなり、Android製品メーカーとしては致命的な状況になった。それでもHuaweiは独自OSでなんとかその後、スマートフォン販売を継続している。
その他のメーカーはそこまでの制裁は受けず、Andorid標準を搭載しているものが多くあるが、情報漏洩やセキュリティを不安視する声がしばしば挙がっているようだ。
具体的にはDoogee、UMIDIGI、Transsionなどで出荷時点で悪意あるマルウェア、アドウェアなどが入っているものがあった、という情報が挙がっている。
ただ、それら疑いの商品は正規販売品ではなく、並行輸入や非公式販売の場合にリスクが高いという声もある。
また、明らかに悪意のあるマルウェア混入はなくとも、セキュリティアップデート、osアップデートが遅く、悪意ある者たちにセキュリティ欠陥を悪用されるという意見もある。これについてはメーカーの悪意的なものというより、会社規模的にその余裕がないということなのだろう。
以下は自分の体験であるが、自分は現在まで3年間弱、Oukitel製品をメインスマートフォンとして使ってきたが、特に各種アカウント、メールアドレスの漏洩を感じたことはない。
その間に2025年5月ごろ、日本では証券会社のアカウント漏洩騒ぎ、アカウント乗っ取り騒ぎが起きたが、自分も証券会社のアカウントは2つ所有しているが自分はその事件には巻き込まれなかった(当時は二重認証にすらしていなかったが)。
メールアドレスについては自分は昔、迷惑メール問題(spam)を扱っていたこともあり、長らく独自ドメインを利用して漏洩には気を使っている。すなわち
「Peatix情報漏洩(2020年)により受信するようになった迷惑詐欺spamメール2024年末までの分析報告」(2025/2/17)
という記事を書いているくらいだ。独自ドメインのメールアドレスをOukitelスマホで3年間使ってきたが、漏洩されたらしい様子は見つかっていない。
自分は若い頃、中国関係に人生を賭けようとしたくらいなこともあり、現在でも中国シンパな部分があるので、この手の問題については中国への評価は甘い。それを前提としたうえで、中国メーカーへの批判はきちんとした事実に基づいているというよりも、政治的な面が強いのではないかと疑っているが、かといって中国企業がそのようなことはしないだろうと全面的に信頼するわけでもない。
そのような姿勢であるので
「まあ大丈夫だとは思うけど、漏洩されたらその時はその時で仕方ない。」
という考え方になっている。
■終わりに
本記事では「中華タフネススマホ」と呼ばれる製品のメーカー、中国・深圳を拠点とするメーカーについて紹介を行い、購入の際の注意点などを述べた。