2008年以来、16年ぶりに「GPSロガー」に関する記事を書こうと思ったが、状況も若干変化しているのでまず本記事では改めて「GPSロガーとは」ということについて書きたい。現在ではスマートフォンのアプリで「GPSロガー」の役割を持たせることが可能になり、自分もそれはそれで利用している。しかしその一方でやはり専用の「GPSロガー端末」も旅行などの重要なお出かけでは手放せないと感じている。
[推敲度 3/10]
なお、16年前に
「ハンディGPS、GPSロガー、GPSレシーバー(GPSセンサー)の違い」2008/8/31
という記事を書いていて、今読んでもそれほど外れたことは書いていない。特にそちらではタイトルの通り、ハンディGPS(ポータブルGPS)、GPSロガー、GPSレシーバとの違いを中心に書いているので一読していただけたらと思う。
1■GPSロガーとは?
「GPSロガー」とはGPS(Global Positioning System、全地球測位システム)衛星を利用して位置座標を内部記憶メモリに保存する専用端末である。次節の各種GPS機器の中の一つだが「ロガー」と言った場合には「記録のみ」を行う機能に特化していることが多い。記録のみということは、現在位置を示す液晶などは装備しておらず、装置としては電源を入り切りするボタンと、電源のON/OFFを示すランプ一つというシンプルな作りが多い。
大きさは単3乾電池を2~3個並べたくらいだが、もちろん製品により様々で名刺サイズカード大くらいのもあった気がする。電子機器であるから当然電源が必要で、通常はリチウムイオンバッテリを内蔵する。
詳細な特徴は他のGPS製品との比較をしたいこともあり、まずは他のGPS製品を概観することにしよう。
2■GPSロガー以外のGPS機器
GPSロガーは「GPS機器」の一種である。「GPS機器」はGPS衛星の電波を受信して現在の位置を把握する装置で、カーナビ(カーナビゲーション)がその代表である。GPSは米軍により1970年代から軍事目的で整備されたが、1990年代に民間に開放され、急激に利用が広まった(民間開放の切っ掛けは航空路を外れて撃墜された大韓航空機撃墜事件だったという)。
ここではGPS機器にどんなものがあるかを概観し、後述のGPSロガーの特徴を考える一助としたい。
●カーナビ(カーナビゲーション)
自分の認識では一般に広く広まった最初のGPS機器が「カーナビゲーション」所謂「カーナビ」である。すなわち車が目的地に向かうために道順等を指示してくれる装置だ。
自分が子供の頃(1970年代)は、ドライブと言えば運転手と助手席の者が冊子地図をとっかえひっかえして、ところどころで停車しながら道を探していく、見つけていくものであった。子供の立場から見ていて「面倒くささ」を感じたものだ(またそれはそれで一興ではあったが)。
それが若い頃(20世紀末)にカーナビが登場し、ドライブは非常にスマートになった。カーナビが登場してから自分が思うようになったのは「カーナビの無いドライブは絶対にしたくない!」ということだ。カーナビが登場して暫くの頃はレンタカーで車を借りる時、カーナビが付いているかを必ず確認するようにしていた。(しばらくしたら「カーナビが付いていない」というのは有り得なくなり、確認すら不要になったが。)
●ハンディGPS(ポータブルGPS)、GPSレシーバ
これについては
「ハンディGPS、GPSロガー、GPSレシーバー(GPSセンサー)の違い」2008/8/31
で書いたが、一言で言えば、ハンディGPSはカーナビの個人携帯版、GPSレシーバは他の機器(パソコンなど)に位置座標をリアルタイムで送る機器、と言える。
●GPS発信器
本節冒頭で書いたように、GPS機器はGPS衛星電波を受信することが根本的な役割で、自らは電波を発信する必要は本来ない。その役割を持たせて、GPS端末の位置座標をリアルタイムに他の場所へデータ送信出来るようにしたものが「GPS発信機」と呼ばれる。
まあぶっちゃけ、浮気調査、素行調査でイメージされる機器だ。現在では子供やお年寄りへの「見守り」機器としての役割も考えられ、必ずしもアングラ的な商品ではないだろう。
他の場所へデータ送信する方法は現在では「携帯電話データ通信」が一般的だろう。しかし2008年に自分がGPSロガーについてブログ記事を書いた時には、この機器については全く触れていないが、当時「携帯電話データ通信」は今ほど盛んなものではなかった。当時はまだ「携帯電話」すなわちガラケーで、メール通信とiモードなどの限定されたインターネットが使われるだけなのが一般的だった。データ通信では携帯電話通信は割高なので、PHS通信が使われたりもした。
携帯電話データ通信が広まるのは2010年頃からスマートフォンが広がり始め、通信規格もガラケー時代の3Gから3.5G、3.9G、そして4Gが登場(2011年頃)してからだったと言える。「GPS発信機」もこの頃から本格的に広まり始めたと思われる。
●スマートフォンのGPS機能とアプリ
前項で述べたGPS発信機とともに、2008年に自分がGPSロガーを使い始めて以降、大きな変化があったのがこの機器、スマートフォンだ。そもそもスマートフォンが広がり始めたのが2010年頃(自分が最初に持ったスマホは2009年1月)だった。データを調べると2010年当時のスマホ普及率は4%だったのが、2024年には97%だという。
スマートフォンは登場当時「高機能携帯電話」という注釈がついた。その高機能の一端がGPSだったと言える。スマートフォンでは当初からGPSがついているものが多かった。GPSの一般的な用途は「地図アプリ」で現在の自分の位置を見ること、すなわち上述した「ハンディGPS」「ポータブルGPS」の役割だ。GPS機能がついていて、地図アプリ(Googleマップなど)が入っていれば「ハンディGPS」の役割がまずは出来たということだ。
そしてそれ以上の役割(すなわちGPSロガーとか)として使えるかどうかは、そもそもスマートフォンの機能というのは実際にはアプリに依存するので、そのようなアプリが登場しているかどうかによる。たとえば「GPSロガー」の役割については当初、スマートフォンOS「Android」を提供するGoogle自身が「My Tracks」というアプリをリリースしていた。しかし何故か2016年に提供終了、その後自分は「Geo Tracker」というアプリを使うようになっている。そもそも2008年以来ぶりにGPSロガーに関するブログ記事を書こうと思ったネタの一つはこの「Geo Tracker」である。
●機能別で考える
ハンディGPS、GPSロガー、GPSレシーバ(GPSセンサー)、GPS発信機は、その備え付ける機能で考えると整理が出来るかもしれない。
ハンディGPS(ポータブルGPS) | GPSロガー | GPSレシーバ(GPSセンサー) | GPS発信機 | スマートフォンとアプリ | |
位置座標をリアルタイムで表示する機能 | ◎ | ✕ | ✕ | ✕ | ◎ |
位置座標をリアルタイムで他機器に送信する機能 | △ | △ | ◎ | △ | ◯(アプリに依る) |
位置座標を記録する機能 | △ | ◎ | △ | △ | ◯(アプリに依る) |
位置座標を他の場所へ送信する機能 | ✕ | ✕ | ✕ | ◎ | ◯(アプリに依る) |
◎・・・それを主目的として想定している
△・・・製品によっては装備している可能性がある
✕・・・通常はそのような機能はない
3■GPSロガーの特徴を改めて考える
さて、以上のようなさまざまな「GPS機器」があるわけだが、スマートフォンによりそれらの役割が代行できるようになっているのは確かだ。そこでここではGPSロガー専用端末についての特徴をスマートフォンでのGPSロガーアプリ使用との比較を重点に述べる。
●専用GPSロガーの利点
◆バッテリー消費
・専用GPSロガーはその役割だけなのでバッテリー消費が限られ、16時間~24時間はバッテリーが持続するものが多い。すなわち早朝出かけたら真夜中までバッテリー切れを気にすること無く使用することが出来る。
・スマートフォンはバッテリー消費が激しく、特にGPS機能を使った場合、その傾向にある。現在普及している一般的なスマートフォンでは朝から晩までGPSロガー機能を使った場合、バッテリが夜まで保たない可能性が高い。バッテリー交換可能機種(別な記事で取り上げるTORQUE G06 KYG03など)ならばバッテリーを交換出来るが、そうでなければモバイルバッテリーなどを使うなどして途中で充電する必要がある。
◆動作の安定性
・スマートフォンではいろいろなアプリの中の一つとしてGPSロガーアプリが動作するため、意図せずにそのアプリの機能が停止してしまうことがある。また再起動をしたときにGPSログが継続して記録を再開するとは限らない。スマートフォンのGPSロガーアプリではきちんと動作しているかをかなり意識する必要がある。
しかし専用GPSロガーでは「電源ボタンが押されて電源が切れる(通常は長押し)」「バッテリーが切れる」という二点以外でGPS記録が中断されるということはまずない。朝、出かける前に起動したら終日、気にしなくて良い。
◆端末とアプリの相性、買い替えの必要性
・スマートフォンのGPSロガー使用、端末とアプリの相性がしばしばある。人にもよるだろうがスマートフォンは数年ごとに買い替えることが多いように思われ、買い替えたときに新しい端末でGPSロガーが前のようにうまく動作するとは限らない。専用GPSロガーは不具合、性能の不満が出ない限り買い替えの必要がない。実際、自分は2012年にGPSロガー端末を2機種、購入してから11年以上、壊れるまで使い続けた。
●GPSロガーの欠点
◆リアルタイムでGPSログを見ることは出来ない、その役割は「ハンディGPS」
・自分の使っているのは、液晶がついていないGPSロガーである。記録後にパソコンに転送して記録を見ることで利用する。リアルタイムでGPSロガー内の記録を見ることは出来ない。ガーミンのハンディGPSなどは液晶のついているものが多く、そういうものは私は使ったことがないが、バッテリーの減りの問題、端末が大きくなるなどの問題があると思われる。
スマートフォンのGPSロガーはロガーはリアルタイムで記録を確認できる。
◆毎日使うなら毎日充電が必要
・バッテリーが持続するといってもせいぜい1日間なので、使う日の前には充電する必要がある。毎日使おうとすれば毎日充電する必要がある。
スマートフォンは基本的に毎日充電するのが通常だと思われる。GPSロガーアプリに関係なく充電するので、特にGPSロガーアプリのために充電するという意識はしなくて済む。
◆データの変換が必要なことが多く、そのアプリの継続使用が問題
・GPSロガーにログが記録される場合、製品ごとの独自データで保存していることが多く、その取り出しにパソコンの専用ソフトを使うことが多い。5年とか10年とかGPSロガーを使う場合、そのアプリを使い続けられるかが一つの難題となる。特にパソコンのOSの代替わりの際がネックになる。
この点、WindowsOSは昔から後方互換性が高いため、アプリが使えなくなることは少ない。しかしこの手のアプリはGPS機器を接続(USB、Bluetoothなど)し、それを認識してデータをDLしてくるものが多いが、このデバイスの認識が新しいOSでスムーズにいくとは限らない場合がある。
自分が使っていたGPSロガーもアプリから機器の認識ができなくなり、焦ったがGPSロガーが外部ストレージとして中身が見えて、その中のデータをコピーしてそれをアプリで認識できることが分かり事なきをえたことがあった。
なお、昔のGPSロガーは独自データでの提供で一般的なデータ形式になっておらず、その変換に苦労したことも会ったが、その後はGPSデータ形式とは一般的な「GPX」などに変換できるようになっていることが大部分だと思われる。
4■GPSロガーとスマートフォンアプリの使い分け
前節のように、GPSロガーはスマートフォンでGPSロガーアプリ使用に比べて長所と欠点があるため、自分は最終的に現在
・日常的にGPSログを取るためにはスマートフォンのGPSロガー(Geo Tracker)を利用。
・ドライブ、お出かけ、旅行など、確実にGPSログを取りたい時にはGPSロガーを併用。
という使い方をしている。アプリの意図せぬ終了、バッテリーの問題などを考えると、確実にGPSログを記録したい時には欠かせないツールである。
5■Googleタイムラインは使いたくない
さて、本記事はGPSログを残すことが、楽しく、また有意義であるということを主張するために作っている記事である。それならば「Googleタイムラインを使えばいいじゃないか」という方がいるかもしれない。Googleタイムラインはかつて「Googleロケーション履歴」と呼ばれたもので、Google アカウントと連携した Google マップがインストールされているスマートフォンを利用して、ユーザーの移動履歴や距離、滞在場所を記録する機能である。
だが私はこの機能を使うことを好まない。
- GPS軌跡は非常にプライベートな記録である。GoogleタイムラインはGPSログをインターネット上(クライド)に保管することを前提としており、セキュリティリスクを考えると避けたいと思っている。
- GPS機能はもともとインターネットとは関係なく、インターネットが使えなくてもGPS衛星が捉えられる場所なら使用できる(本記事で紹介したGPSロガーは通常、インターネットなどが繋がる機能はない)。Googleタイムラインはインターネット接続を前提としているため、インターネットの使えない山岳地帯、飛行機上、船舶上などでは機能を果たせない。
1番であるが、現在、インターネット接続を前提とした各種サービスすなわち「クラウドサービス」は我々の便利な生活になくてはならなくなりつつある。しかし私はクラウドを全面的に信用していない。信用していないというのは「漏洩の可能性が常にある」という意味だ。大変便利であるから、使わないわけではない。むしろ平均の人よりもいろいろなクラウドサービスを使っているかもしれない。しかし漏洩の可能性を想定し、過度に使うことはしないようにしている。すなわち、注意どころの一番は
「自分のコンピュータのプライベートデータを無闇にインターネット上に上げない。」
ということだ。たとえば自分は生活上の記録として写真を年間1万枚以上撮影しているが、インターネット上には極力アップロードせず、スマートフォンからパソコンへの転送はローカルネットワークを通じてするなどを心がけている。そのような方針である以上、写真全部と同じくらいプライベート情報が含まれるGPS履歴を全てインターネット上に自動保管するというのは自分としてはリスクが大きすぎると感じている。
2番目は記述の通り、GPSロガーの良い点はインターネットに関係なく、GPS軌跡を記録できることだ。たとえば飛行機に乗ったときに軌跡を残すのも大きな楽しみの一つだが、飛行機上ではインターネットが使えるとは限らない。特に離発着の時には一般的に携帯電話データ通信機能は禁じられる。だがGPS利用は禁じられていない。GPSログのためにインターネット接続の確保を必要とすることは面倒なことである。
本設での考え方はおそらく万人に共通するものではないだろう。だが現在のところ自分はそう考えている。将来、自分音考え、方針が変わるかは分からない。
6■終わりに
本記事ではGPSロガー専用端末について、他のGPS機器との違い、スマートフォンでのGPSロガーアプリ利用との比較などを中心に紹介を行った。
以上のようにGPSロガーには欠点もあるものの、「確実にGPSログを残す」という点では優れたツールと言える。