iPhone 3.0ではBluetoothで音楽を聞ける!?今度こそA2DP、AVRCPへ対応を!

 私のブログではApple製品について全く扱っていないのだが、Bluetoothに関していろいろ取り上げてきた手前、タイトルのことすなわちiPhone 3GのBlueooth機能(不完全さ)について(今更ではあるが)述べておきたい。

[推敲度 0/10]

 本記事は当初
「iPhone 3GはBluetoothを音楽向けヘッドフォンで使えない~A2DPとAVRCPに非対応」
というタイトルで書いていたのだが、作成途中でiPhone 3.0発表の情報が飛び込んできた。

 きっとiPhone 3.0ではこの記事で書いたようなBluetoothの欠点は解決されると信じたい。iPhone 3Gの後継であるiPhone 3.0が時期を含めて具体性を帯びてきた今更、iPhone 3Gの欠点を挙げる本記事をリリースするのもアレだがiPhone 3.0への期待も込めて新しいタイトルにてアップしておくこととした。

[そもそもBluetoothヘッドフォンって何が美味しいの?]

 本ページにはBluetooth初心者の方も訪問するかもしれないのでBluetooth(ブルーテュース、俗称・青歯)ヘッドフォンの基本的なことを述べておこう。

 そもそもBluetooth(ブルーテュース)が何か、どうしてそのような規格が作られたか(と思われるか)、ということについては

[Tips] Bluetoothとは?(ブルートゥースとは)
https://blog.stakasaki.net/article/200809article_2.html

で述べているので参照して欲しい。

 さてBluetoothヘッドフォンについては私の記事で多く割いてきた。

・Bluetoothを扱った記事の一覧
http://stakasaki.at.webry.info/theme/f0d0042dec.html

 Bluetoothヘッドセットの快適さに感激した最初の記事は

・ 意外に便利なワイヤレスヘッドセットLBT-HP100C2/Bluetoothで快適!
https://blog.stakasaki.net/article/200806article_2.html

で書いたが、その記事はあまりうまくまとまっていないので、改めてBluetoothヘッドフォンの快適さを力説しておこう。

 Bluetoothヘッドセットの快適さは以下の3点だと思われる。

●ワイヤレスであることの快適さ
●ヘッドセット側で音量調整、再生・停止、曲送り・曲戻しが出来ることの快適さ
●ハンズフリーにも兼用できることの快適さ

 この3つを細かく詳説しているとそれだけで一記事が出来るので、それはまた別途書くことにしたいが、特にここで強調したいのは2番目の「音量調整、曲送り・曲戻しが出来る」という点である。

 すなわち従来、音量調整や曲送り(次の曲にスキップすること)、曲戻し(前の曲にスキップすること)はプレーヤ本体側でするのが一般的であった。だがプレーヤは得てして鞄やポケットに入れることが多く、いちいち取り出してそれらをするのはかなり面倒である。比較的優れたプレーヤは構造的に手探りでそれらが出来るようになっていることが多いが、それでも不便なものである。

 ところがBluetoothヘッドセットでは「その多くで」ヘッドフォン側での再生停止、曲送り曲戻し、音量調節が出来るようになっているのだ。

 ちなみにBluetoothヘッドフォンの中には「ペンダント」と呼ばれる、胸にぶら下げる装置がついていて、そこから両耳へのコードが伸びているものがあるが、私はあれは全くワイヤレスだという感じがしない。ヘッドフォンとのコードに加え、首かけようのヒモまでついて、余計有線が鬱陶しいではないか。

 Bluetoothヘッドセットなら、断固としてコードが両耳ヘッドフォンの間でのみついている製品をお勧めする。丸い耳かけ式のものが多いのだけど、以下では耳かけ式のものでない、ユニークな、両耳用ステレオBluetoothヘッドセット製品のみを挙げておく。


 これらの製品では音量調整や曲送り、曲戻しなどが耳元で出来るようになっているのである。今までは鞄に手をゴソゴソ入れたり、取り出したりしてしか調整できなかったそれらが、耳元に手を動かしてチョコチョコとするだけで出来るなんて、なんてスマートではないか!

 ちなみに他の人はどうか知らないが、携帯音楽プレーヤを聞いていて音量調整や曲送り曲戻しをすることが私はかなり多い。
 すなわち周辺の音の違いによってかなり頻繁に音量調整をする。また基本的にはお気に入りの曲ばかりを聴いているが、それでも「あ、今はこの曲はスキップしたいな」とか「このリストに入っている、もっとノリの良い曲を聴きたいな」などということがあり、その際に曲送りをしたりする。

 今までそれはポーチに手を入れて、手探りで音量調整や曲送りなどをしなければならなかったのであるが、それが耳元で出来るのだ。

[Bluetoothプロファイルへの理解]

 ところが上のようなメリットは必ずしも全てのBluetooth機器で実現できるのではない。

 それを理解するにはBluetoothに関する理解を少々深めなくてはならない。すなわちBluetoothという規格はそれが単一の種類ではなくて、複数の種類(規格)=プロファイルから成り立っているのである。

 というのもBluetooth搭載製品の種類にはワイヤレスヘッドフォンだけでなく、たとえば、ワイヤレスマウス・キーボード、ゲーム機であるWiiのリモコンとか携帯電話などがあるわけだが、ヘッドフォンなどでやり取りされるのは音声データだし、マウス・キーボードではパソコンの入力情報だし、Wiiではリモコンの動作情報?などであり、携帯電話では音声データのこともあればパソコンなどとの接続用の通信データの場合もある。

 すなわちワイヤレスといっても実際に無線で行き交うデータには単一とは言い難いいろいろな種類のデータがあることに気が付くだろう。
 素人的に考えてもワイヤレスマウスを動かすために行き交うデータとワイヤレスヘッドフォンで行き交う音楽データは同じ種類のものとは考えにくい。

 事実、それぞれのBluetooth搭載無線機器の種類毎に「プロファイル」と呼ばれる規格があるのであり、ワイヤレスマウスとワイヤレスヘッドフォンでは満たすべき規格が違っているのである。

 全部読む必要はないが具体的にBluetoothの「プロファイル」を全て挙げておきたい。

・GAP(Generic Access Profile)
  機器の接続/認証/暗号化を行うためのプロファイル
・SDAP(Service Discovery Application Profile)
  他のBluetooth機器が提供する機能を調べるためのプロファイル
・SPP(Serial Port Profile)
  Bluetooth機器を仮想シリアルポート化するためのプロファイル
・DUN(Dial-up Networking Profile)
  携帯電話・PHSを介してインターネットにダイヤルアップ接続するためのプロファイル
・FTP(File Transfer Profile)
  パソコン同士でデータ転送を行うためのプロファイル(TCP/IPのFTPとは無関係)
・HID(Human Interface Device Profile)
  マウスやキーボードなどの入力装置を無線化するためのプロファイル
・HCRP(Hardcopy Cable Replacement Profile)
  プリンタへの出力を無線化するためのプロファイル
・BPP (Basic Print Profile)
  プリンタへ転送・印刷するためのプロファイル
・OPP(Object Push Profile)
  名刺交換(データ)などを行うためのプロファイル
・SYNC(Synchronization Profile)
  携帯電話・PHSやPDAと、PCとの間で、スケジュール帳や電話帳のデータ転送を行い、自動的にアップデートするためのプロファイル
・LAP(LAN Access Profile)
  Bluetoothを利用して無線LANを構築するためのプロファイル
・FAX(FAX Profile)
  パソコンからFAXを送信するためのプロファイル
・HSP(Headset Profile)
  Bluetooth搭載ヘッドセットと通信するためのプロファイル、モノラル音声の受信だけではなく、マイクで双方向通信する
・HFP (Hands-Free Profile)
  車内やヘッドセットでハンズフリー通話を実現するためのプロファイル、HSPの機能に加え、通信の発信・着信機能を持つ
・BIP (Basic Imaging Profile)
  静止画像を転送するためのプロファイル
・PAN (Personal Area Network Profile)
  小規模ネットワークを実現するためのプロファイル
・A2DP (Advanced Audio Distribution Profile)
  音声をレシーバー付きヘッドフォン(またはイヤホン)に伝送するためのプロファイル、HSP/HFPと異なり、ステレオ音声・高音質となる
・AVRCP (Audio/Video Remote Control Profile)
  AV機器のリモコン機能を実現するためのプロファイル
・PBAP (Phone Book Access Profile)
  電話帳のデータを転送するためのプロファイル
・OBEX (Object Exchange)
  オブジェクト交換(OPP、BIP、FTP、SYNC)で用いる認証方式の一つ。データ転送プロファイルの一つで、実装しているとデータ送受信時にOBEX認証パスキーの入力を接続相手に要求する。
・ICP (Intercom Profile)
  同一ネットワーク内にあるBluetooth搭載携帯電話同士を公衆電話網を介さずに直接、接続させるためのプロファイル。

 Bluetooth規格と言っても実際の中身はこれだけの種類に分かれているのだ。

 Bluetooth機器では必ず「対応プロファイル」というのが仕様に載っており、上のプロファイルのうちどれを備えているか決まっており、それによって機能が決まっているのである。

 言い換えればそうすることによって、たとえば
「マウスなのにヘッドセットと同じように音楽を転送する機能を備えている」
「スピーカなのにキーボードのデータを転送する機能を内蔵している」
などいう無意味なことにならないようにしているわけなのだ。

[今回の話で関係するプロファイルは特にHSP、HFP、A2DP、ACRCP]

 さて今回の話で関係するのは、上のプロファイルのうち

HSP(Headset Profile)
Bluetooth搭載ヘッドセットと通信するためのプロファイル、モノラル音声の受信だけではなく、マイクで双方向通信する

HFP (Hands-Free Profile)
車内やヘッドセットでハンズフリー通話を実現するためのプロファイル、HSPの機能に加え、通信の発信・着信機能を持つ

A2DP (Advanced Audio Distribution Profile)
音声をレシーバー付きヘッドフォン(またはイヤホン)に伝送するためのプロファイル、HSP/HFPと異なり、ステレオ音声・高音質となる

AVRCP (Audio/Video Remote Control Profile)
AV機器のリモコン機能を実現するためのプロファイル

の4つだ。すなわち前半の2つ「HSP」「HFP」は音声チャット・パソコン電話(Skypeなど)に使うワイヤレスのヘッドセット(マイクとイヤフォン)の場合に搭載されるものであり、後者二つ「A2DP」「AVRCP」が音楽鑑賞用のヘッドフォンの場合に搭載されるのだ。

 ハンズフリーの為の「ヘッドセット」(すなわちイヤフォンもしくはヘッドフォンとマイクの複合機器)と音楽鑑賞の為の「ヘッドフォン」では搭載されるプロファイルが違うのである!

 ハンズフリー用ヘッドセット向けプロファイルを前者、音楽観賞用ヘッドフォン向けプロファイルを後者とすると、両者の違いは以下のようなものだ。

  • 前者向けHSPはモノラルのみ、後者向けA2DPはステレオ対応。
  • 前者向けHSPは音声受信だけではなく、マイクを使った音声送信のデータにも対応。
  • 前者向けHSPは後者向けA2DPに比べ音質が著しく劣る。
  • 後者向けAVRCPには前者向けと異なり、再生・停止、音量調整、曲送り・曲戻しのリモート機能がある。
 すなわちHSP搭載の製品でも音楽などを聴くことは出来るのだが、モノラルでしか聞けない上、非常に音質が悪いのだ。加えて再生・停止や曲送り・曲戻しのリモートコントロール機能に対応できないのである。

 音質については実際に私も聞いたことがあったが、音質に拘る気がない私ですら、AMラジオの放送で音楽を聴いているような感じに「これは駄目だ」と感じてしまった。

[iPhoneは現在音楽向A2DP、AVRCPに対応していない]

 でようやく最後になるわけであるが、ここまで読んできた方ならお察しのように、iPhone 3Gでは音楽鑑賞の為のBluetoothプロファイルA2DPとAVRCPを備えていないのだ。
 それが備えているのハンズフリー用であるHSP、HFPプロファイルだけなのだ。

 iPodで音楽鑑賞の快適さを追求してきた(と聞く)Appleが何故iPhoneに音楽鑑賞向けBluetoothプロファイルを備えなかったのか、私には理解できない。
 もしかするとiPodの売り上げが落ちることを危惧した?

[iPhoneでBluetoothで音楽を楽しむ方法]

 ではどうあがいてもiPhoneでBluetoothヘッドフォンを使うことが出来ないのかというと、面倒なことであるがアダプターをつければ使えるらしい。しかも感心なことにAVRCPプロファイルの機能つまり音量調整や曲スキップ(曲送り・曲戻し)が出来る機能のある製品もあるようだ。

 そもそもiPhoneでなくても、従来のBluetooth非搭載音楽プレーヤ(携帯でもラジカセでも)でもBluetoothヘッドフォンやスピーカを使うようにするためのBluetoothアダプタというものが存在する。それは普通、音楽機器にはほぼ必ずついている、イヤホン用ステレオミニジャックに差し込むステレオミニプラグがついている製品で、そこからBluetooth電波を飛ばすというものだが、悲しいかな、機構上そのアダプタから再生・停止、曲送り・曲戻しなどを制御することまでは不可能なはず。

 ところがiPhoneの場合、コネクタが専用の特殊形状・仕様なため、そこへつけるアダプタでは曲送り・曲戻しなどが出来るらしい。

 ただ、今度はHSP、HFPでは使えないなど、やはり本体で標準装備するより不便そうだ。

[関係する記事、情報]

・2008.09.27 iPhoneとBluetooth

・iPhone 3G対応Bluetoothヘッドセットで音楽を聴く
・Bluetooth イコール音楽が聴けるとは限らない – プロファイルを確認しよう
http://www.nire.com/2008/06/iphone-3g-bluetooth-profiles/

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コメント

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