草稿:マイクロソフトがWindows7の開発を急ぐ理由とは!?ネットブックの影

つづき)さてタッチパネルのことはともかく、図体がでかくなってなかなか新製品の開発がスムーズに進まなくなったマイクロソフトであるが、Windows7については前述のように意外なペースで開発が進んでいるようだ。

[推敲度 草稿/10]

 何故マイクロソフトはWindows7を急いでいるか?

 それは恐らく間違いなく工人舎製品、ASUSのEeePCなどを嚆矢とするネットブック(Netbook、UMPC、ULCPC)製品達の想像以上の広がりによる。

 私がリリース当初にブログで散々腐したEeePCであるけれども、結果としてネットブックは2008年のパソコン業界の一大話題となった。当初「安いパソコンは利益を出すのは困難」と参入を否定するかのように見せた各大手パソコンメーカも、あまりの話題性を無視できなくなり、加えて米国の金融危機を切欠とする世界同時不況が広がる中で、近年伸びる可能性が確実な数少ない分野として、HP、DELL、東芝、NEC、富士通などなどが参入するに至った。

 さてネットブックはULCPC(ウルトラローコストPC)と呼ばれ、そのCPUプラットフォームも最新・最高性能のものではなく、そういう製品に向けた安いものが採用されており、具体的に言えばこれもまた2008年にリリースされたIntelのAtomが使われていることが多い。

 ところがそのCPUプラットフォームAtomでは、マイクロソフトが2007年に出したWindowsVistaは荷が重いのである。
 マイクロソフトのWindowsはWindows Millennium Edition(Windows Me)以後、OS発売当時のパソコンでは少々負担が大きい作りになる傾向があり、すなわち「OSのシステム要件(必要スペック)」と呼ばれる、推奨されるもしくは必須とされるハードウェアの仕様がOS発売当時に広まっているパソコンからすると厳しい場合が多くなったのだ。

 現在すっかり「軽い」OSとして人気を得ているWindowsXPであるが、これも発売当時は散々「重い」「遅い」という評判があったのだが、その後に次第に世の中のパソコンが入れ替わるに伴い、現在に至っているものだ。

 マイクロソフトは当初、VistaもそのXPと同じ道を歩むと期待したに違いない。ところがそこへ登場したのだがVistaでは荷が重いネットブックの登場だったのだ。

 もともと新OSが出るとマイクロソフトはパソコンの新製品に旧OSを載せるのを許さないためネットブックのメーカにはLinuxなど他のOSに逃げる傾向が出始めた。

 ああ素晴らしいかな競争社会よ!
 どんなコメントを標榜していようとマイクロソフトは心の中ではLinuxなどを潜在的に脅威と感じているのだろう、またVistaに対してその方向性に反省するところも心中少なからずあったのかもしれない、その結果、マイクロソフトはWindowsXPをネットブックでは搭載することを認めざるを得なくなった、というか認めてXPを搭載して貰うしかなくなってしまったのだ。

・「Windows XP」の提供期間、再延長の可能性が濃厚に(2008/03)

マイクロソフトは「Windows Vista」への移行を強く働きかけているが、低コストノートPC市場や新興成長市場を中心に、『XP』が生き残る可能性は高い。XP販売停止期限は今回もまた延長されるのではないだろうか。
・米MS、Windows XPのOEMライセンス延長をネットトップに拡大(2008/06)
・米Microsoft、Windows XPのシステム・ビルダー向けライセンスを再度延長 (2008/12)
・MS、「Windows XP」ディスク提供を6カ月延長–大手PCメーカー向けに決定(2008/10)
マイクロソフトは、大手PCメーカーに対して、「Windows XP」を一部「Vista」マシンに同梱すること、および、工場でXPにダウングレードしたVistaマシンを販売することを6カ月間延長した。
・マイクロソフト、中小企業向け「Windows XP」販売ライセンス提供期限を延長(2008/12)
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20385756,00.htm

 大企業となって愚鈍な部分も出てきたように見えるマイクロソフトであるがそこはやはりIT業界の長、Vistaはやはりこのような状況の中で、いくらハードウェアの進化が早いと言ってもネットブックにVistaが「軽々」載せられるようになる見込みは薄いと判断したに違いない。

 しかしリリース後8年になるWindowsXPの提供をいつまでも続けるわけにはいかないし、Vistaに注ぎ込んだ開発投資も無駄にするわけにはいかない。
 そうなればネットブック(Netbook、ULCPC)に対応したVistaの後継OSを早くリリースせざるを得ないではないか!

 しかも今度のバージョンアップはVistaのスリム化ということで、新しいものを加えていくと言うよりはシンプルにしていく作業だから負担は軽いと思われる。

 EeePCを始めとするネットブックは2008年の年末商戦で圧倒的な売り上げを見せたという情報もある。

・低価格ミニノートの爆発的なヒットを受けて、ついにメーカーが普及に本腰へ
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20090106_netbook/

 2009年に入ってもこの勢いは続く可能性が高く、そうなればマイクロソフトはミニノート(ネットブック)に適したWindows7のリリースを急ぐに違いない。

 パソコンメーカーに対しては、すでにリリース後8年経つXPよりも次期OSであるWindows7の方がOEM供給の際に少しでも値段をふっかけることが出来るであろうし、ユーザに対しては、拡大するネットブック利用者がそれらのパソコンでWindows7に親しんだ場合、もっと大きなノートパソコンやデスクトップなどのパソコンでもWindows7を導入したり、あるいはWindows7のインストールされたパソコンに買い換えをすることが強く期待できる。

 以上のように考えれば、マイクロソフトがWindows7を急ぐ理由が十分に分かるだろう。マイクロソフトにとってはネットブックが拡大しているうちに早急にWindows7をリリースしなければならないのだ。

[関連リンク集]

・NetbookでWindows 7は快適に動くのか? Windows 7の実像 番外編
http://ascii.jp/elem/000/000/205/205582/

・Vistaの二の舞を演じるWindows 7――マイクロソフトは“教訓”を忘れたのか
http://www.computerworld.jp/topics/ms/122189.html

・えっ、Windows7 だって?!
http://www.search-firm.co.jp/blog/kawakami/2009/01/windows7.html

・思ったより「軽い」? Windows 7 β1を低スペックPCに入れてみた
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0901/14/news032.html

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