先日の26日、以下のような新聞記事が載った。
帝銀事件:発生から60年 「救う会」現場歩く
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080127k0000m040061000c.html
現在、世界的には廃止の機運が高まっているらしい死刑制度。私は基本的に死刑制度には賛成だ。
私が死刑制度に賛成なのは、死刑というものの役割の一つに被害者達の「復讐」の意味があると思っているからだ。
すなわち近代国家は個人の私刑(リンチ、私的復讐)を認めていない。だが犯罪の被害者に遭った当事者もしくはその関係者からすれば加害者に復讐したい、場合によっては殺したいほど復讐したいと考えるのは人として自然な感情であり、それらを否定するのはむしろ人間性を否定するものだと思う。
そして国家が私刑を禁じた以上、国家はそれを代行する義務があるわけで、だから刑罰には復讐の意味が当然あると思うのだ。(これが学問・思想的に認められるのかは知らない。また、言うまでもなく刑罰の目的が「復讐」だけではないことは確かだが。)
そう考えたとき刑罰の一つとして「死刑」がないのは非常に不自然だと感じる。
私は必ずしも「現在で言うところの」死刑は究極の重刑だとは思っていない。まず死刑の執行方法として複数の種類があっても良いと感じるし、あるいは死刑よりも重い懲役・禁固刑も考えられると思う。
だが犯罪被害者にとっては「加害者を殺す」というのは間違いなく復讐として望む、シンプルな形であり、当然刑罰の選択肢の一つとして考慮に入れるべきものだと思うのだ。
死刑論議が出て以降、この観点からそれなりに関心を持って意見を読んできたつもりであるが、今のところ納得できる主張にお目にかかったことがない。
だがそんな私であるけれども、鳩山邦夫氏の「自動的に死刑執行」は勘弁してくれ、という感じであった。Web上のアンケートではこの発言に肯定的な意見も多いようだ。そんな方にお聞きしたい。あなたは帝銀事件を御存知であろうか?
・帝銀事件
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/teigin.htm
詳しいことは省くが現金奪取の為に罪のない12名を青酸カリで死亡させた凶悪犯罪である。
・1948年1月26日 事件発生
・8月21日 テンペラ画家平沢貞通が逮捕される。
・1955年5月7日に死刑判決。
・1987年 平沢氏は肺炎を患い八王子医療刑務所で病死。
ところが平沢氏は無実の可能性が極めて高く、死刑判決後にもたびたび再審請求が出されたが、結局、平沢貞通氏の再審が行われることはなく、死刑判決後30年以上経って平沢氏は獄中で死亡した。
この間、
歴代の法務大臣は死刑執行を命じなかった。新聞記者の前で一度に23人の死刑執行を署名した田中伊三次でさえ「これは冤罪だろ」と言って死刑執行を命じなかった。
というほど、平沢氏が無実であることは「公然」だったにもかかわらずだ。
これが戦前の話とかなら分かる。だが、平沢貞通氏が獄中で死んだのはつい20年前の1987年である。
あなたは1987年、何をしていただろうか?その時代ですら、皆に無実だと思われていた人物が冤罪のまま獄中で死んでいるのである。
確かに上記の事件自体は、1948年という、戦後の混乱期に起こったものであり、当時の警察の捜査状況と今では大きく異なるに違いない。
だがそこで起こった「間違い、冤罪(の可能性)」は結局高度経済成長がとっくに終わり、いくつかの不景気・好景気を経て、バブルと言われる未然の好景気を迎えた時(1987年)にも、訂正されることはなかったのであり、その間30年以上、平沢氏は死刑執行を受けないまま、獄中におかれていた事実は極めて憂慮すべきものがある。そして今でも平沢氏の名誉を回復するための再審請求への努力が続けられているという。
http://www.gasho.net/teigin-case/
無実の可能性が高かった平沢貞通氏の獄中死からたった20年。
果たしてその間に日本の裁判制度は何か変わったであろうか?二度とこのようなことを生み出さないというだけの制度が整ったであろうか?
帝銀事件に関して何らかの形で精算が行われるまで、自動的な死刑執行などは行われるべきではないだろう。それは恐らくまだ当分先になるに違いない。
コメント
私は死刑には反対です
死刑と言うより海外のような懲役何百年にした方がよいと思っています。
逆に現在の死刑と無期懲役とのギャップが酷すぎますね
それこそなんとかして欲しいものです
冤罪の可能性はあるにせよ、
判決から10年以上も再審請求をしない死刑囚を放置するのはいかがなものかと思います。
執行するか、再審するか、ある程度の年限を切る。
事件の証拠の関係からいっても最終判決から5年以内で決定すべきでしょう。
死刑制度に反対です。執行を許可するのが、政治家というのも気に入りません。彼らは全てに於いて無実でしょうか?また裁判官、私。無実の人間がいるでしょうか?そんな理由で反対です。戦争は国家犯罪だと思いますが、正義の戦争はないのに、人は戦わされます。権力によって。権力者が死刑執行の書類に判を押すのは納得できません。また15年すぎた死刑囚は放免されていいのではないでしょうか。